遺言書
なぜ遺言を残すのか
遺言書を残す理由は人により考え方がいろいろあると思います。
いくつか例を挙げてみます。
- 相続争い『争族』を避けるため
- 自分が相続する際に困った経験があり家族の負担を減らしたいから
- 特定の人に特定の財産を渡したいから
- 法定相続分によらない割合で相続したいから
- 相続人以外に自分の財産を渡したい
- 普段は照れくさくて言えないけれど、遺言で家族に感謝など日ごろの気持ちを伝えたいから
他にもいろいろな想いがあると思います。
遺言も万能ではありませんが遺言により自身の想いを残すことができます。
遺言書の種類
遺言書の種類には3つあります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
秘密証書遺言はほぼ使われることがないため割愛します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは遺言者本人で作る遺言です。
必要なものは紙とペンと印鑑、封筒、糊です。
封筒については法的要件ではないため必須ではありません。
ただし、大切な遺言書の変造の回避、不要な紙と思われて破棄されるリスク低減のため
封筒に入れることをおすすめします。
メリット
自筆証書遺言はとても簡単に作成できます。思い立ったが吉日すぐに作成が可能です。
専門家にサポートを依頼しない場合、費用はほとんどかかりません。
気軽に自分の意志を残すことができます。まずは大切なご家族のために、
とりあえず遺言書を作ってしまうというのもできますし、
遺言書は撤回ができますので重く考えることなく作成することが可能です。
デメリット
簡単に作れますがコツを知らずに作ってしまうと、
曖昧さが残り遺言に疑義が生まれ争いが起きてしまうことがあります。
家族等による偽造、変造、隠匿、破棄の恐れもありますし、
貸金庫などに入れておくと発見されないなどの恐れもあります。
また『簡単に』作れますが法的要件があります。
これをを満たしていない場合はそもそも無効になります。
本当に『本人』が書いたものかが争われる事例もあります。
さらに、原則、家庭裁判所による検認が必要です。
家庭裁判所に検認の申立てをしてから1ヵ月程度を要します。
もし、検認を怠り、遺言執行を行った場合、または、封のされた遺言書を家庭裁判所外で
開封した場合は5万円以下の過料に処される場合があります。
金融機関においては解約や名義変更するとき、
法務局においては不動産登記をするときに検認済みでなければ
自筆証書遺言書を受け付けてもらえないことが一般的です。
検認が不要になる場合
原則、自筆証書遺言では検認が必要ですが不要となる場合があります。
それは遺言書保管制度を利用した場合です。
遺言書保管制度を利用する際には法務省令で定める様式による
遺言書である必要があります。
自筆証書遺言作成方法
遺言者が自分で作成します。
『全文』『日付』『氏名』を自書して『押印』します。
相続財産の一部もしくは全部について目録を添付する場合は自筆する必要はありません。
ただし、目録の各ページに署名・押印が必要です。
両面ある場合は両面に署名・押印が必要です。
先にも述べましたが、封筒に入れることは法的要件ではありません。
しかし、封筒に入れることをおすすめします。
封筒を使う際のポイントは封筒にも遺言者がすべて自書、
遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封印する、遺言書と同じ日付を書くの3つです。
封筒に入れいる際には封筒に相続人ために以下の記述をすることが望ましいです。
開封を禁ずる
この封書を遺言者の死後速やかに家庭裁判所に提出して検認を受けること。
公正証書遺言
メリット
公正証書遺言は原則、無効になることがありません
公正証書遺言は公証人というプロが遺言書を作成します。
そのため、押印がないとか全文が自筆でないとかそういった自筆証書遺言に
求められる要件を気にすることなく有効な遺言書が作成できます。
ただし、遺言者本人が認知症である場合など意思能力に問題がある場合に
無効とされた事例が全くないわけではありません。
偽造・変造されることがありません。
遺言者が伝えた内容を公証人が文書にするため
第三者が偽造・変造することはできません。
紛失の恐れがありません
公正証書遺言の原本の保管は公証役場で行わます。
遺言者には謄本が渡されるため謄本を紛失しても再交付が可能です。
原本、正本及び謄本が全て滅失しても、その復元ができるようにするため、
平成26年以降に作成された全国の遺言公正証書の原本を電子データにして、
二重に保存するシステムを構築しています。
また、平成元年以降に作成された公正証書遺言については、
公正証書遺言の有無に関する検索をすることも可能です。
ただし、秘密保持のために、検索をすることができるのは、
相続人等の利害関係人に限られます。
面倒な検認が必要ありません
相続人が検認をご存じでなくとも相続手続きをスムーズに開始することが可能です。
自筆する必要がなく自筆が困難な方でも遺言を残すことが可能です。
公証人が、遺言公正証書に、その旨を記載するとともに、
「病気のため」などとその理由を付記し、職印を押捺することによって、
遺言者の署名に代えることができることが法律で認められています。
公証実務では、これに加えて、公証人が遺言者の氏名を代署し、
その代署した氏名の次に、遺言者に押印してもらうことが行われており、
遺言者が押印することもできないときは、遺言者の意思に従って、
公証人等が遺言者の面前で遺言者に代わって押印することができます。
デメリット
費用がかかります。
上記とは別に手数料が必要となります。
証人が2人以上必要
公正証書遺言を作成するためには2人以上の証人が必要です。
証人とは、遺言者が本人であること、遺言内容が本人の
意図するものであることを確認するものです。
証人には誰でもなれるわけではありません。
- 未成年者
- 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
上記の者は証人にはなれません。
証人は遺言者が準備することも可能ですし、公証役場でも紹介が可能です。
当事務所でも証人となることができます。
公正証書遺言作成方法
- 遺言書の原案作成
- 必要な書類の準備
- 原案と書類の提出
- 公証人との打ち合わせ
- 公証役場へ行き遺言書作成
遺言書の原案作成
遺言書にどのようなことを記載したいかをまとめます。
このときは、箇条書きでわかりやすくまとめるとよいと思います。
内容としては『誰に』『何を』がわかるようにします。
事前に遺言書に記載する財産をまとめると作成しやすいです。
必要な書類の準備
- 遺言書の原案
- 遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書
- 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
- 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
- 財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、
固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書 - その他、遺言の内容や公証役場の違いにより必要な書類が異なる場合があります。
公証役場への原案と書類の提出
原案作成と必要な書類の準備ができたら公証役場へ連絡をし、面談の予約をします。
通常、予約から1週間程度で公証人と打ち合わせができます。
打ち合わせの際には必要な書類を持参します。
そうして、文案を作成していきます。
もし、健康上の問題などで公証役場へ行けない場合は事前に相談すれば
自宅や病院へ出張してもらうことが可能です。
公証役場へ行き遺言書作成
証人2人以上と共に公証役場へ行きます。
打ち合わせの際と同じで健康上の問題などで公証役場へ行けない場合は
事前に相談すれば自宅うや病院へ出張してもらうことが可能です。
当日の流れは以下の通りです。
- 公証人が遺言者と証人に本人確認を行う
- 公証人遺言書を読み上げる
- 遺言者と証人が遺言書の内容を確認する
- 遺言書に遺言者・証人・公証人が署名捺印する
- 公証役場から『正本』と『謄本』が交付される
- 手数料を支払う
遺言者が健康上の問題などで証明できない場合は事前に公証人に伝えておけば
公証人が理由を付記して署名に変えることが可能です。
手数料は文案が決定した時点で通知されます。